Liberty Bell
自由の鐘 リバティ・ベル

世界の行進曲・愛国歌/アメリカ合衆国

行進曲『自由の鐘 The Liberty Bell リバティ・ベル』は、1893年にアメリカの音楽家スーザ(John Philip Sousa/1854-1932)によって作曲された。

同じくスーザ作曲の行進曲『星条旗よ永遠なれ』と並んで演奏機会の多い人気の曲であり、ビル・クリントン大統領やブッシュ大統領、オバマ大統領などの就任式にもアメリカ海兵隊軍楽隊(United States Marine Band)によって演奏されている。

PROCLAIM LIBERTY THROUGHOUT ALL THE LAND
UNTO ALL THE INHABITANTS THEREOF

自由を宣言せよ
全地上と住む者全てに
-アメリカ独立記念館前 「自由の鐘」銘文より -

元はオペレッタ向けの楽曲

スーザはその生涯で100曲を越える行進曲を作曲したことから「マーチ王」として称賛されているが、『エル・カピタン El Capitan』などのオペレッタ(軽歌劇・喜歌劇)作品も数多く残している。

この『自由の鐘 The Liberty Bell』も当初はオペレッタ「The Devil's Deputy」のために作曲された楽曲だったが、そのオペレッタは資金調達に失敗して日の目を見ることはなく、楽曲自体もお蔵入りとなってしまった。

1893年、イリノイ州シカゴでシカゴ・コロンブス万国博覧会が開催されており、スーザと楽団のマネージャーも見学に出かけていた。

彼らはアメリカをテーマとした見世物を鑑賞中、フィラデルフィアの「自由の鐘 the Liberty Bell」(後述)が舞台背景に描かれているのを見て、お蔵入りとなったオペレッタの楽曲のタイトルを「自由の鐘」と題することを思いついたという。

アメリカ独立と「自由の鐘」

下の写真の建物は、ペンシルベニア州フィラデルフィアにある世界遺産(文化遺産)「独立記念館 Independence Hall」。旧ペンシルベニア州議事堂として1749年に建造され、 1776年7月4日にここでアメリカ独立宣言が採択され、1787年にはアメリカ合衆国憲法が制定された。

1790年から1800年にかけてフィラデルフィアがアメリカの首都だった時代には、この旧ペンシルベニア州議事堂がアメリカ合衆国議会議事堂として使用されていた。アメリカ議会では「上院・下院」があるが、これは旧ペンシルベニア州議事堂の二階を元老院が、一階を代議院が議場として使用したことに由来している。

ペンシルベニア州議事堂の「自由の鐘」

「自由の鐘 The Liberty Bel」は、ペンシルベニア州議事堂の鐘として1751年に鋳造が開始された。完成後初めて叩いた時にいきなりヒビが入ってしまうというアクシデントにも見舞われたが、補修を繰り返すことで維持され、議事堂の尖塔にその姿を現していた。

1776年7月4日、ペンシルベニア州議事堂において、アメリカ13植民地の代表による大陸会議の決議がなされ、イギリスからの独立を宣言する「アメリカ独立宣言」が採択された。

同年7月8日、ペンシルベニア州議事堂の「自由の鐘」は高らかに鳴り響き、アメリカ独立宣言が朗読される同議事堂へとフィラデルフィアの市民を招集すると、以後「自由の鐘」はアメリカにおける独立・自由の象徴的存在・シンボルとなっていった。

その後の「自由の鐘」

その後「自由の鐘」は、アメリカ合衆国憲法を起草したアレクサンダー・ハミルトン(Alexander Hamilton)、アメリカ独立宣言の主要な作者トーマス・ジェファーソン(Thomas Jefferson)など、アメリカ建国にかかわった重要人物が亡くなった際に弔いの鐘として鳴らされた。

1846年2月22日、ジョージ・ワシントンの誕生日祝いに数時間に渡って鳴らされた際、修復された亀裂が広がってしまい、以降「自由の鐘」は使用不能になってしまった。

1876年には、アメリカ合衆国独立100周年を記念して催されたフィラデルフィア万国博覧会を記念してレプリカが贈られ、使えなくなった「自由の鐘」の代わりにペンシルベニア州議事堂(独立記念館)に取り付けられた。

2003年10月、「自由の鐘」は独立記念館の向かいに建設されたリバティ・ベル・センター(Liberty Bell Center)へ移動され、観光客向けに一般公開されている。

YouTube動画の視聴

「空飛ぶモンティ・パイソン」テーマ曲に

イギリスの伝説的コメディ番組では、そのオープニングテーマ曲として、スーザ作曲『自由の鐘 The Liberty Bell』を起用したことで知られている。

同番組は、1969年から1974年までイギリスBBC が製作・放送した番組であり、当時の英国コメディ史上類を見ない毒の強いナンセンスな内容は欧米文化に大きな衝撃を与えた。

以後イギリスのコメディ史を語る上では「パイソン放送以前」、「パイソン放送以後」と、時代の大きな転換点として把握される歴史的番組。

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