God Bless America
ゴッド・ブレス・アメリカ

世界の行進曲・愛国歌

アメリカ愛国歌『God Bless America ゴッド・ブレス・アメリカ』は、代表曲『ホワイト・クリスマス』で知られるアーヴィング・バーリン作詞作曲による1918年の楽曲。

アーヴィング・バーリン(Irving Berlin/1888–1989)(右写真)はロシア帝国出身のアメリカ移民で、ニューヨークのチャイナタウンでカフェのウェイターをしながら専属歌手として働いていた。

まともな音楽教育は受けていなかったが、つたないピアノを奏でながら作曲活動を続け、ヒット曲が生まれるようになると、主にショーやミュージカル向けの楽曲を手掛けるようになっていった。

アメリカが第一次世界大戦に参戦(1917年)すると、アメリカ陸軍は軍所属の音楽家としてバーリンを特別召集し、ニューヨークのヤファンク(Yaphank)にある新兵準備施設キャンプ・アプトン(Camp Upton)に配属させた。

バーリンは1918年、施設建設費を獲得するべく企画された軍主催の舞台『Yip Yip Yaphank』向けに何曲か劇中歌を作曲。その中の一曲に、後に知られる『God Bless America ゴッド・ブレス・アメリカ』も含まれていたのだが、舞台全体の雰囲気から見てこの曲だけ浮いていたため、結局舞台では使用されずお蔵入りとなってしまった。

終戦記念日のラジオ放送で一躍人気に

それから20年後の1938年、オーストリアを併合し勢いづいたナチスドイツの不穏な動きが広がる中、ユダヤ人として憤りを感じていたバーリンは、20年前に封印した『God Bless America』をアメリカ愛国歌として世に送り出す時機が来たと感じていた。

当時の歌詞に若干の変更を加えたうえで、新たな時代の愛国歌として再び命を吹き込まれた『God Bless America』は、第一次世界大戦が終結した記念日である1938年11月11日「Armistice Day」のCBSラジオ番組において、アメリカの人気女性歌手ケイト・スミス(Kate Smith/1907-1986)の歌声で全米に放送された。

愛国心を呼び起こす『God Bless America』の壮大な歌詞とメロディは、たちまち多くのアメリカ国民に受け入れられた。楽譜は飛ぶように売れ、バーリンはこの売り上げを元に、ボーイスカウト/ガールスカウトのために「ゴッドブレスアメリカ基金」を設立した。

同曲は、ケイト・スミスを代表するsignature song(代名詞的作品)として、第二次大戦中はもとより、戦後のテレビ放送でもたびたび彼女自身のライブパフォーマンスが放映され、その人気を確かなものとしていった。

ケイト・スミス 大統領自由勲章を受賞

『God Bless America』を半世紀近く歌い続けてきた功績が認められ、1982年、アメリカ合衆国における文民向けの最高位の勲章「Presidential Medal of Freedom(大統領自由勲章)」(右下写真)がレーガン大統領(右写真)からケイト・スミスに授与された。

同勲章は、「アメリカ合衆国の国益や安全、または世界平和の推進、文化活動、その他の公的・個人的活動に対して特別の賞賛に値する努力や貢献を行った個人」に贈られるもので、過去にはウォルト・ディズニー、ジョン・ウェイン、フランク・シナトラなど、そして作曲者のアーヴィング・バーリンも1977年に受章している。

ケイト・スミスの授章式において、彼女が歌う『God Bless America』について、レーガン大統領は次のような祝辞を述べている。

The voice of Kate Smith is known and loved by millions of Americans, young and old. In war and peace, it has been an inspiration.

ケイト・スミスの歌声は年齢を問わず数多くのアメリカ国民に広く知られ愛されている。争いの時にも平和な時にも、思いを呼び起こさせる存在であり続けた。

Those simple but deeply moving words, 'God bless America,' have taken on added meaning for all of us because of the way Kate Smith sang them.

シンプルだが深く心を揺さぶる『God Bless America』の歌詞は、ケイト・スミスの歌声により更に意味深いものとなった。

Thanks to her they have become a cherished part of all our lives, an undying reminder of the beauty, the courage and the heart of this great land of ours.

彼女のおかげで『God Bless America』は我々の人生における大事な一部分となり、我らの住む大地の美しさ、勇敢なる精神、そして強い心を尽きることなく思い起こさせてくれる。

In giving us a magnificent, selfless talent like Kate Smith, God has truly blessed America.

ケイト・スミスのような高尚で私心なき人物を生み出したことで、主は真にアメリカを祝福されたのだ。

ソニー・ミュージックのトップアーティストが集結してチャリティアルバムを緊急発表。セリーヌ・ディオン、マライア・キャリー、グロリア・エステファン、ボブ・ディラン、サイモン・アンド・ガーファンクル、フランク・シナトラなど、アメリカの賞賛や未来への希望といったポジティヴなメッセージが込められた歴史的名曲をセレクト。育児休暇中だったセリーヌ・ディオンも、2年間の沈黙を破って新レコーディング。音楽史に残る歴史的1枚。

動画の視聴

【歌詞・日本語訳】

God Bless America, Land that I love.
Stand beside her, And guide her,
Thru the night with a light from above.

アメリカに主の祝福あれ 我が愛する国よ
アメリカを守り 導きたもう
夜通し降り注ぎし 天上の御光

From the mountains,
To the prairies, to the oceans,
White with foam
God bless America,
My home sweet home.

山々を越え 平野を渡り 泡立つ海原へと
アメリカに主の祝福あれ
我が愛しの祖国よ

【コメント】

二つ目の動画は、1938年の休戦記念日にラジオで初放送された『God Bless America ゴッド・ブレス・アメリカ』(歌:ケイト・スミス)。当時は次のようなイントロ部分が存在したが、現在ではこのイントロ部分はあまり歌われなくなっている。

While the storm clouds gather far across the sea
Let us swear allegiance to a land that's free
Let us all be grateful for a land so fair,
As we raise our voices in a solemn prayer

海の向こうで嵐の暗雲が立ち込める中
自由なる地に忠誠を捧げん
美しい大地に感謝を捧げん
厳粛なる祈りの中 我らは高らかに声を上げる

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