君が代 日本国 国歌

日本/Japan

日本の国歌『君が代』が誕生したのは、明治維新から大日本帝国憲法が発布されるまでの激動の時代。まずは国歌誕生に至るまでの歴史を諸外国との関係・外交を中心として軽く見ていきたい。

おしつけられた不平等条約

当時の日本は、1858年にアメリカと締結した日米修好通商条約により、アメリカ側に領事裁判権を認め、関税自主権が奪われていた状態だった。

<右写真:日本初の総領事タウンゼント・ハリス>

同様の不平等条約は、イギリスフランスロシアオランダとも締結され、後に「安政五カ国条約」と呼ばれた(その後さらに西欧諸国と締結)。

お雇い外国人の貢献

明治維新により1868年に成立した明治政府は、不平等条約の撤廃に向けて欧米列強と国際法上対等の外交的地位を獲得するべく、立法・行政・教育・軍備などの様々な分野で近代国家体制の構築と欧化政策を進めた。その際に大きな役割を果たしたのが、明治政府によって招聘された「お雇い外国人」と呼ばれる、諸外国の技術的・文化的指導者たちである。

有名なところでは、「日本近代法の父」と讃えられるフランスの法学者ボアソナード(ボワソナード)、日本陸軍の近代化に貢献したドイツ帝国の軍人クレメンス・メッケルなどが挙げられるが、音楽情報を扱う当サイトとしては、日本の近代音楽教育の基礎を築いたメーソンに注目したい。

メーソンがもたらした西洋音楽

メーソン(Luther Whiting Mason/1818-1896)は、1880年から1882年までアメリカから招聘された音楽教育者で、1879年に設立された文部省の音楽教育機関「音楽取調掛(後の東京藝術大学音楽学部)」において、伊沢修二らとともに音楽教育プログラムの開発を行った。

この明治期における音楽教育では「西洋音楽と東洋音楽の折衷」という点が大きな特徴となっており、日本初となる西洋式楽譜付き唱歌集「小学唱歌集(小學唱歌集)」(1882-1884)では、今日の日本でも知名度の高い世界の民謡・歌曲が日本の唱歌として教材に採用されている。

『見わたせば』
ルソー作曲。現在は童謡『むすんでひらいて
『蝶々(ちょうちょう)』
スペイン民謡。アメリカでは『Lightly Row』
『庭の千草』
アイルランド民謡『夏の名残のバラ』
『うつくしき』
スコットランド民謡『スコットランドの釣鐘草』
『蛍』
現在の『蛍の光』。原曲はスコットランド民謡『Auld Lang Syne』
『才女』
スコットランド民謡『アニーローリー』
『花鳥』
ウェルナー『野ばら』

最初の『君が代』はフェントン作曲

近代国家の外交儀礼上欠かせない日本の国歌制定への道のりは、イギリスから招聘された軍楽隊長ジョン・ウィリアム・フェントン(John William Fenton)の進言から始まった。

1869年8月、当時のイギリス女王ヴィクトリアの次男エディンバラ公アルフレッドが来日することとなり、来賓を迎える儀礼式典での国歌吹奏の必要性が生じたが、当時の日本には国歌の概念がなかったため、フェントンは日本の国歌制定を進言した。

<右写真:ヴィクトリア女王>

日本側から国歌の作曲を依頼されたフェントンは、通訳の原田宗助が歌っていた『武士(もののふ)の歌』を参考に、最初の『君が代』を作曲した。歌詞は『古今和歌集』収録の短歌から採用された。

しかし、フェントン作曲による最初の『君が代』の評判は芳しくなく、肝心のフェントンは1877年にアメリカ人女性と再婚し渡米してしまった。

プロイセン王国フランツ・エッケルトが編曲

そこで新たな『君が代』のメロディを作曲し直すべく、1879年にプロイセン王国(現ポーランド領)から作曲家フランツ・エッケルト(Franz Eckert/1852-1916)を招聘。1880年に宮内省の奥好義(おく よしいさ)がつけた旋律を、雅楽演奏者の林廣守((はやし ひろもり)が曲に起こし、エッケルトが西洋風和声を付けて編曲し、今日の『君が代』が完成した。

その後は1888年に対外的に正式公布がなされ、『君が代』が日本国における事実上の国歌として、外交儀礼の場で演奏されるようになっていった。なお、法制化されたのは1999年(平成11年)8月13日。

国歌誕生後の日本

外交儀礼上不可欠な国歌も作曲され、近代法の整備、大日本帝国憲法の施行など(1890年)、日本における近代国家体制の構築は着実に進められていった。

欧米列強と締結した不平等条約の改正については、明治新政府の最重要課題の一つとして断続的に交渉が行われたが、すべての不平等条項が撤廃されるには、日清戦争(1894-1895)、日露戦争(1904-1905)での勝利を待たなければならなかった。

そして第二次世界大戦後、占領下の日本において連合国軍総司令部(GHQ)が大きく関与し制定された日本国憲法では、第9条「戦力の不保持」、「交戦権の否認」等が定められ、かつての不平等条約と同様、今日の日本国は主権国家として本来有すべき根幹たる諸権利に大きな制約が加えられている。

日本を取り巻く昨今の緊迫した国際情勢を踏まえ、憲法改正へ向けた議論のさらなる深化が望まれる。

動画の試聴

【歌詞】

君が代は
千代に八千代に
さざれ石の
巌となりて
苔のむすまで

May Thy peaceful reign last long!
May it last for thousands of years!
Until this tiny stone will grow
into a massive rock
And the moss will cover it all
deep and thick.

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 国歌誕生から120年。その歴史を{音}でたどった初企画盤。宮内庁楽部による「君が代」の初期ヴァージョンも新録音で収録。現在に至るまでの詳細な解説は、資料としても一読の価値十分。

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国家データ

首都 東京 Tokyo
面積 約37.7万平方km
人口 約1億2776万人(2006年)

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