フィンランドの乙女 スオミネイト
国土擬人化(女性化)のパイオニア?

世界史・国際関係トピックス

擬人化大国(?)日本ではこれまで、国家を擬人化した「」、艦船を擬人化した「」、日本刀を擬人化した「刀剣乱舞」など、世界に類を見ない独自の文化を発展させてきた。

だが擬人化と言えば、実は既に100年以上前のフィンランドにおいて、その元祖とも言うべき国土擬人化(女性化)が行われていた。

フィンランドの国土擬人化(女性化)とは、国の国境線全体(輪郭)を世界地図で見た時に、その形が人間のシルエットに見えるというもの。具体的にどのような女性像が浮かび上がるのだろうか?実際に見てみよう。

スカートをはいたフィンランドの乙女

そのキャラクターとは、金髪で青い眼をした若く美しい裸足の女性スオミネイト(Suomi-neito)。「フィンランドの乙女(Finnish Maiden/Maiden of Finland)」とも呼ばれる。

「スオミ Suomi」とは、フィンランドで9割以上の人口比率を占める民族「フィン人」の自称。スオミの語源については諸説あり定説はない。

フィンランドの地図をご覧いただければよく分かるが、国境線の形が、スカートをまとい手を掲げて立っている女性の姿のようにも見え、スオミネイト(フィンランドの乙女)もそのような容姿のキャラクターとして描かれることが多い。

ロシアに奪われた乙女の片腕

スオミネイトが考案された頃のフィンランド国土は現在よりも広く、擬人化的観点から言えば、両腕を大きく万歳するように国境線が広がっていた。当時描かれたスオミネイトも両腕を広げた女性として描写されている。

<上の地図で「SUOMI」と表記された部分がフィンランド。赤い部分がロシアに奪われた領土>

しかし第二次世界大戦中にフィンランドとロシア(当時のソビエト連邦)との間で3年以上戦われた継続戦争の結果、フィンランドは領土の10分の1以上をロシアに割譲。その際、スオミネイトの片腕と片足はロシアに奪われた結果となった。

ちなみに、有名なフィンランド民謡『サッキヤルヴェン・ポルカ Säkkijärven Polkka』で歌われるサッキヤルヴィ(Säkkijärvi)は、ロシアに奪われた「Karjala カレリア」地方にかつて存在した町。今も歌い継がれるこの歌には、ロシアへの臥薪嘗胆の思いが込められているように感じられる。

フィンランド大使館が日本でイラスト公募

東京都港区の駐日フィンランド大使館では、2012年、フィンランドを擬人化したキャラクター「スオミネイト(フィンランドの乙女)」の新たなイラストを公募した。

きっかけは、フィンランド大使館の公式ツイッター上でスオミネイトを紹介したのが始まりだそうで、「国の擬人化」という新たなジャンルに大きな反響があったという。イラスト公募は既に締め切られ、同年3月1日に大賞(上のイラスト/@ba66ieさんの作品)、入賞作品などが発表された。

ロシアの脅威から乙女の笑顔を守り抜け

日本独自のキャラクター文化を通じて、こうした新たな国際文化交流の輪が生まれることは非常に喜ばしいことだ。

日本もフィンランドも地理的にロシアの脅威に晒される国同士、更なる交流の機会を増やし、密接な協力関係を築くことで、北欧の乙女の笑顔をとこしえに守っていくことができればと、切に願うばかりだ。

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