I Vow To Thee, My Country
祖国よ 我は汝に誓う

世界の行進曲・愛国歌/イギリス

『祖国よ、我は汝に誓う I Vow to Thee, My Country』は、ホルスト作曲の組曲「惑星 The Planets」の中で最も有名な第4曲『木星 ジュピター』のメロディが用いられたイギリスの愛国歌。

邦題としては、『我は汝に誓う、我が祖国よ』などとも表記される。歌詞は3番まであるが、2番が歌われる機会はほとんど見られないようだ。

ダイアナ妃のセレモニー曲に

ウェールズ公妃ダイアナ(Diana, Princess of Wales)(上写真)は、『I vow to thee, my country』を学生の頃から大変気に入っており、1981年の婚礼時にも用いられたほか、1997年の葬儀や2007年の追悼式典でも同曲が使用された。

ウェールズ出身のシャルロット・チャーチ(Charlotte Church)がで歌っているほか、メゾ・ソプラノ歌手キャサリン・ジェンキンス(Katherine Jenkins)、ボーイズ・ソプラノ合唱団もレパートリーに加えている。

浅田真央選手もプログラムに使用

また、ラグビーワールドカップ(Rugby World Cup)のテーマソング『World in Union』にもメロディが転用されているほか、日本では、が2011-2012シーズンにおけるエキシビション・プログラムで同曲を用いて話題となった。

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イギリスの外交官が作詞

歌詞はイギリスの外交官セシル・スプリング=ライス(Cecil Spring-Rice/1859-1918)(右写真)が1908年に創作した詩が元となっている。

当初のタイトルは「Urbs Dei(The Two Fatherlands)」と題され、祖国と天界に対してクリスチャンが抱くべき忠義心を題材としていた。

「And there's another country」から始まる3番の歌詞は、天国を暗に示した内容となっており、最後の歌詞は、イングランド国教会の聖書「Authorized King James Version(欽定訳聖書/ジェームズ王訳/ジェイムズ王訳)」に登場する一節から転用・改変されている。

一番の歌詞を大幅修正

スプリング=ライスは1912年に対アメリカの大使に任命されると、アメリカのウィルソン大統領政権下において、アメリカの第一次世界大戦への参戦に影響を及ぼしたという。

アメリカ参戦後(1917年)はイギリスに帰国したスプリング=ライスだったが、その帰国直前の1918年1月、一番の歌詞を大きく書き変え、戦争で多大な犠牲を被ったイギリス兵らに焦点をあてて再構成した。

休戦記念日セレモニーの曲に

1918年11月11日に休戦協定が締結され、第一次世界大戦は終結した。スプリング=ライスの詩にホルスト『木星』のメロディがつけられた1921年以降、同曲はイギリス愛国歌『I vow to thee, my country』として、特にイギリスにおける11月11日のRemembrance Day(Armistice Day/追悼の日)セレモニーで歌われるようになった。

1926年には讃美歌として出版されると、そのメロディは、ホルストが長年暮らしたエセックス県アトルズフォード市(Uttlesford)にある村の名前から「Thaxted(サクステッド)」と命名され、以後このメロディで様々な歌詞の讃美歌が誕生している。

[写真:2006年にロンドンで開催されたRemembrance Day ceremony]

動画の視聴

キャサリン・ジェンキンス盤

ボーイソプラノ合唱団リベラ盤

シャルロット・チャーチ(デビューアルバム)盤

歌詞の意味・日本語訳(2番は割愛)

1.I vow to thee, my country,
all earthly things above,
Entire and whole and perfect,
the service of my love;

祖国よ 我は誓う
比類なき完全なる愛を捧げん

The love that asks no question,
the love that stands the test,
That lays upon the altar
the dearest and the best;
The love that never falters,
the love that pays the price,
The love that makes undaunted
the final sacrifice.

疑いなき愛
試練をも乗り越えん
祭壇に奉られし最高の愛
揺らぐことなき愛
多くの犠牲により贖われん

3.And there's another country,
I've heard of long ago,
Most dear to them that love her,
most great to them that know;
We may not count her armies,
we may not see her King;

もう一つの祖国がある
古より聞き覚えし祖国が
その国を愛する者にとっては最愛の
その国を知る者にとっては最も偉大な
その国には軍隊もなければ王もいない

Her fortress is a faithful heart,
her pride is suffering;
And soul by soul and silently
her shining bounds increase,
And her ways are ways of gentleness,
and all her paths are peace.

忠実なる心こそが砦となり
受難をその誇りとする
一人一人の心に
静かに満ちる輝き
すべてが平和な穏やかな国よ

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