フランス国歌 ラ・マルセイエーズ
フランス共和国/The French Republic
フランス国歌『ラ・マルセイエーズ La Marseillaise』は、18世紀末のフランス革命戦争の際に、兵士の士気を鼓舞するために作曲された。
フランス革命勃発からフランス国歌誕生直前までの歴史については、こちらのページ「フランス革命とフランス国歌」にて詳しく解説しているので適宜参照されたい。
<上挿絵:ナポレオン・ボナパルト率いるフランス軍がオーストリア(神聖ローマ帝国)軍を破った「アルコレの戦い」>
フランス国歌誕生エピソード
1792年4月、フランス革命政府はオーストリアに対して宣戦布告し、フランス革命戦争が勃発した。プロイセン軍がフランス国境内に侵入すると、革命政府は祖国の危機を全土に訴え、それに応じてフランス各地で組織された義勇兵達がパリに集結した。
その頃フランス北東部のストラスブールでは、工兵将校のルージェ・ド・リール(Claude Joseph Rouget de Lisle/1760-1836)が駐屯していた。
当時大尉だったリール(右挿絵)のもとへストラスブール市長が表敬訪問。ライン方面軍の士気向上のために、音楽的素養のあったリールに行進歌を作るよう依頼した。
出征する部隊を鼓舞するため、リールは一夜にして勇壮な行進曲を作詞作曲。タイトルは『ライン軍のための軍歌』 (Chant de guerre pour l'armée du Rhin)と名付けられ、当時のライン方面軍司令官ニコラ・リュクネール元帥に献呈された。
この行進曲は、マルセイユから集結した義勇兵達によって歌い広められ、後に今日のタイトル『ラ・マルセイエーズ』の名で定着。1795年7月14日に正式に国歌として採用されるに至っている。
今日有名なアレンジとしては、『幻想交響曲』で知られるフランスの作曲家ベルリオーズによる独唱者と二重合唱、オーケストラのための編曲版(1830年)がある。
なお、初期に出版された楽譜には作曲者名が記されておらず、一説によれば、『ラ・マルセイエーズ』の真の作曲者は、ハイドンに学びストラスブールに移住していたオーストリア出身の古典派音楽家イグナツ・プライエル(Ignaz Pleyel/1757-1831)ではないかとの説も存在するようだ。
フランス国歌関連のエピソード
ハイドンが後のドイツ国歌を作曲
当時活躍していたオーストリアの音楽家ハイドン(右挿絵)は、フランスの義勇兵が口ずさんでいた『ラ・マルセイエーズ』のような愛国心を高める賛歌が祖国オーストリアにも必要だと痛感していた。
またハイドンはイギリス訪問時にも、事実上の国歌として人気を博していた『God Save the Queen ゴッド・セイヴ・ザ・クィーン』を耳にし、その思いを強くしていた。
そこでハイドンは、フランス革命戦争中の1797年、詩人レオポルド・ハシュカによる皇帝賛美の詩に、クロアチア地方の民謡を基にした壮麗なメロディをつけ、神聖ローマ皇帝の誕生日に『神よ、皇帝フランツを守り給え』として献呈する形で、事実上のオーストリア国歌を誕生させた。
同曲は、1918年以降のドイツ帝国で賛歌『ドイツの歌 Deutschlandlied』として新たな歌詞がつけられ、1919年に成立したワイマール共和国において正式に国歌として採用された。1952年には3番を歌詞のみが西ドイツの国歌となり、1990年のベルリンの壁崩壊を経て、1991年に現在のドイツ連邦共和国における正式な国歌として受け継がれている。
チャイコフスキー『序曲1812年』にも登場
ロシアの音楽家チャイコフスキー(右挿絵)作曲による『序曲1812年』(作曲は1880年)では、その第3部においてフランス国歌『ラ・マルセイエーズ』の旋律が繰り返し登場する。
1812年といえば、フランス帝国のナポレオン1世がロシア帝国に侵攻し、大敗北を喫して退却した「ロシア遠征(ロシア戦役)」の年。フランスを破ったロシア側の作曲者チャイコフスキーは、その戦いの音楽的表現として、フランス国歌を大胆に楽曲に取り入れている。
ビートルズも『ラ・マルセイエーズ』
ビートルズ(The Beatles)が1967年7月にリリースした15枚目のシングル『All You Need Is Love 愛こそはすべて』では、冒頭・イントロでフランス国歌『ラ・マルセイエーズ』のメロディが用いられている。
同曲は、当時世界初の宇宙中継特別番組「OUR WORLD われらの世界」向けに作曲され、同番組に出演したビートルズによって新曲として発表された。同番組は、5大陸・14カ国の放送局が参加し、31地点を結んで世界で初めて衛星放送で同時中継された世界的な番組だった。
地球規模の世界的な番組向けに作曲されたということもあって、『All You Need Is Love 愛こそはすべて』には、フランス国歌以外にも、イングランド民謡『グリーン・スリーヴス』、アメリカのジャズ楽団グレン・ミラー楽団による『イン・ザ・ムード』、ドイツの大音楽家J.S.バッハ作曲『インヴェンション8番』などが曲中に用いられ、世界的な人類愛・平和のメッセージが世界に発信された。
ちなみに、2002年6月にバッキンガム宮殿で行われた女王エリザベス2世戴冠50周年記念コンサートでは、同曲イントロのフランス国歌はイギリス国歌『女王陛下万歳』に差し替えられて演奏されている。
動画の試聴
歌い手はフランスのテノール歌手、ロベルト・アラーニャ(Roberto Alagna/1963-)。
歌:プラシド・ドミンゴ、指揮:ダニエル・バレンボイム、演奏:パリ管弦楽団
歌詞の意味・日本語訳
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[ Refrain ] |
<リフレイン> |
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国家データ
首都 | パリ Paris |
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面積 | 約55.2万平方km |
人口 | 約5830万人(96年) |
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